東京都高等学校演劇コンクール
城東地区大会第3日目の講評です。
この日の審査員の方々は…
ひぐち丹青さん
林成彦さん
西垣耕造さん
の、3名です。
前回と同様に…、
このメモは審査員の方々の監修を得ていないので、あくまでも私の聞き取りメモで、文責は「ひらり」にあります。
ただ、各部活の活動の参考になればさいわいです。
■都立小岩
○たいへんですね、役者二人でね。私は物語の全体がどうなっているのかを意識して見ますが、現代社会にマッチした作品だと思いました。人間の闇みたいな、誰にもわからない、心の海と書いた心海。
二人だと掛け合いになってしまうので、そのへんは難しいとおもいます。
変化の仕方が甘いかな、小道具とか工夫を凝らしたらいかがでしょう。
人間じゃない人間が出てきたとき、はっきりとした変化、何が出てきたのか分かるとよかったかとおもいます。
前半は、何気ない、ふだん思っている軽いおしゃべりが進行するのはいいとおもいますが、軽い分、流されているかな。軽いけど、しっかり作っているという感じがほしいかな。
その後、お墓を作っていくというのは映画「禁じられた遊び」に通じる恐ろしさが出てよかった。
整理をもっとうまくすれば濃密な作品になるとおもいます。
○脚本のボキャブラリーが豊かだなぁと思いました。言葉に興味のある方の書かれた本だなぁと思いました。おおぐちぼや、が一番関心を持ちました。今ひとつ、観客にインパクトを与えられていないかな。この台詞を言うときは、観客にもこのビジュアルがありありと思い浮かぶような、写真を用意するとかの工夫が。
観客の身体のボキャブラリーが少し足りなかったかな。ここが放課後の図書室であるということを、俳優の身体で表現できるとよかったかな、とおもいます。立ち位置とかミザンスとか。リコーダーをトーキングドラムのように使うのはおもしろかったです。工夫がもっとできるとおもいます。ホームルーム、何で間違えるの、というのとても自然で生き生きしていた。逆に言うと、そこ以外は俳優が台詞に振り回されているかな、という感じがありました。台詞の言い方より、コミュニケーションの取り方に意識を持ってください。
○おもしろい本だなぁ、とおもいました。言葉の持っている力、社会とかに突き刺す力があったと思いました。江戸中期の国学者、本居宣長の「事=言」ということばを思い出しました。いい意味でゾクッとするようなたくさんの言葉が出ていたとおもいます。リコーダー、リアクションから入るという点からもとてもよかったとおもいます。例えば…、割り箸を加えさせて何か言う、「知らないよ」なんていう言葉を封印されたときに、それでも何かを言おうとして出てくる何かがある。意味を伝えようとしない、そんなリアクションが出ていると思いました。
身体の下からグッと入ってくる力、中から、下から出てくる力が出ると、その身体の使い方をやるといいかな、と思いました。
■本所
○力のある演劇部。装置が綺麗、転換も工夫がされている。発声が自然、口跡がきれい。基礎訓練を十分やっていることが伺える。スキのない上演でした。
雑踏のSEが大きいかな。雨音のシーンが三つ続きましたが、やや音が大きかったし、SEがなくても雨の表現ができていたので、SEがなくてもよかったかなと思いました。
小料理屋のシーン、二人の表情がとても自然でした。もうちょっとあのシーンは間があってもよかったのかな、とおもいます。気持ちよく飲んでいるときって、あまりしゃべらないんですよね。はなちゃん、男性として舞台にいるのか女性として舞台にいるのか分からなかった。でもだからこそふしぎな魅力が出ていました。
私は、この作品は、関西弁を使わなくてもいいんじゃないかな、と思いました。自分たちだったらどんな言葉をしゃべるかな、と考えました。携帯もインターネットもない、95年の高校生のことをいろいろ考えました。自分の言葉で是非見てみたいと思いました。
関西弁をしゃべらないでいて、でありながら、終幕近くの、としのりのモノローグ、あそこだけ、必死に関西の言葉をしゃべるといいかな…とか思いました。そんな演出上の仕掛けがあると、東京の高校生ならではの作品となるかと。
○関西弁よく頑張ったとおもいます。私は出身が神戸の隣町、高校が震災で被害の一番ひどかった長田にありました。震災のとき、トラック運転してください、と大学の後輩から言われたのを思い出しました。ジーンと来ました。いい芝居、よく作ったと思いました。
これ以上、感情移入しないこと。これ以上すると、違って来ちゃう。感情移入より、驚き・発見を作り出すことが大事です。自分の情緒で支えながら、相手に対する感情で芝居していく。最後のトイレのシーン、よくやっていた。だからこそ、鏡をつかったらどうか。鏡を必死になって見る。最後は、もっとがんばれるかな。鏡を存在させたらどうか。
芝居とはなにか、というとき「芝居は人間が人間の前で人間のために物語るもの」と考えます、それができていたかな。
○朝、テレビをつけたら一面焼け野原で、これ、日本?と見た覚えがあります。え!と驚くばっかりでした。ぼくは直接の被害者ではない。今でも消えない何かをみんな持っている。でもスタートしなければならない。そういう意味では、しっとりと作られた作品だと思いました。人の行き来、いろんな不幸があるけど、当事者も関係ない人も行き来をしているんだ、ということがよく表現されていた。
あの、傘、ハーモニカのシーン、すごくスキですね。映画の洗練されたワンシーンを見ているようでした。ああいう被害、どこに、だれにぶつけていいか分からない。ゆたかくん、おもいが生き生きと描かれていて、だからこそ泣けてしまう。
当時と今を行き来する…場面の転換の処理がもたついている。柵みたいなものの転換の処理をもう少し工夫するといかがでしょう。
■竹台
○非常にいい男優陣がいますね。個性というか、しっかり自分で自分を理解している。「私はそれなりに楽しく過ごしています」というのがおもしろかったです。
人生設計士の助手、もう少し楽しくやっていい。転換でうまくいかなかったことを、そのまま芝居にしちゃってもいい。トラブルをいっぱい処理しながら、芝居にしていっちゃえばいい。コミカルにして、助手なりにやって、師匠から「いい仕事だ」と言わせるようにしちゃうのもいいかも。コミカルなことで、周りを変えていく。お芝居は上手にやることが目的ではなく、揺り動かしていくこと。失敗の中に発見すること。いっぱい失敗してはちゃめちゃな中から生まれるものを探ってもおもしろいと思いました。ぜひチャレンジしてください。
○芝居の中で「人は変わろうとしなければ」、そんなことを言っていたけどそれをやろうとしたのかな。
仮想世界、よく分からなかったです。ちょっと曖昧模糊としたものが出てきて、説得性がないな、とおもいました。
切り取ってみると、おもしろいシーンがたくさんありました。けど、あれが人生設計士とどうつながっていくのか…流れ的にはどうなんだろう。ときこさんはどうして死のうとしているのだろう…そういう、悲観の仕方をして死んでいくのも、希薄なような気がします。きっかけとして立ち直っていく、その仮想の世界でもう一つ事件がないと、死のうとした人間が戻れるのか納得いかなかったところがあります。
変わろうとするところ、それが見えたのはよかった。もっと強烈なおもしろさを全体につなげる何かがあるとよかった。
○一人の女性を二人が取り合うシーンがよかった。すごい説得力でした。小田和正のシーンとか、ダンスのシーンとか、おもしろいシーンをからだを鍛えて非日常的な身体と言葉で観客を引き込んでほしい。今はまだ俳優の個性に頼っているかな、と思いました。
脚本の知念さん、とても意欲的に作品だと思いました。さめた男性と熱い女性の対比がおもしろいんですよね。情報は、モノローグではなく対話の中で提供する方がおもしろくなるとおもいます。
女が目覚めると男がいた、そんなシーンから初めて、最初の説明のシーンはカットしてもよかったのかな。
脚本の未整理な部分に手を入れて、からだを鍛えるともっといい作品になるでしょう。
■小松川
○今の、〈人と人が面と向かって本音を言わない〉ことを批判的に言っているのかな。嫌われたくないから嫌いになる、今の社会を反映しているのかな。非常に演技、声の言い回し、よくできている、会話の重なりとか少しずつ転換して行く方法、魅力的ですね。
転換でひとつ、今日、夕食いらないから、のあとの転換、ちょっと無機質だったので、役でやったらどうでしょう。喧嘩のシーンで、やめろと止めるシーン、タイミングがあっていてよかった。
パソコンを使うこと、へいしんじゅつし、心を閉ざしてというこの人たち、具体的に何をするのか分からない。ラグというのも何者なのか、ちょっと尻切れトンボ、前半おもしろかったのにちょっと残念。
○智慧があるなあ、すごいなあ、と転換について思いました。ルイが走って出て行った後、青空教室だ、いって出て行くのはおもしろかった。随所におもしろいところがありました。ルイが隠れるところもおもしろい。なんなんだろうこれは、とおもいました。
へいしんじゅつしという職業の書き込みが足りないなぁ、とおもいました。役割とか。存在意義が問われるときのお話、ラグのコンビネーションのお話のプロットの関係がやや薄いかと思いました。
ゆうじ役のかた、自然でよかったです。目つぶしとかもすごいですね。脇のキャラクターが中心のキャラクターを支えていました。
○コンピューターの次の発想、これはおもしろいと思いました。転換はとてもいいですね。だからこそ、椅子を持ったときに、固定点というものを使う。身体はいっぱい動かすけど、椅子は動かさない。どたばたしていても、安定して作られている感じで見える。
ものを持ったときには、それを固定する。
リアクションが取れているので、テンポがとてもいい。小さな変化のリアクションもよく考えてください。
台本最後のページ、「…」がたくさんありますが、この…をどう表現するか。どんな身体の表現を使えるか。見るとか、息を抜くとか、前に出るとか、工夫してください。
■墨田川
○周囲となじめないさやかに対比させる存在としてカメレオンというものを作ったのがとてもおもしろいと思いました。カメレオンとして登場した方の演技がとてもおもしろかったですね。一番最後のシーン、さとうくんが、さやかと話しているときにシーンがとてもよかった。本にちゃんと意識が向いていて、リアリティを感じた。台詞を言うことに一生懸命になることが高校演劇では多いのだけれど、見事だな、とおもいました。
オープニングの一番最初のシーンは、もしかしたらなくてもよかったのかな。放課後の教室のシーンからできましたよね。いきなり転換が入ったので、もしオープニングをするなら、もう少し長くやってもよかったのかな。
上手の前側の椅子が一脚だけのったままだと、不在が強調されてしまう。けれど強調されるべきキャラクターではなかった。早く降ろせば、誤解を生まなかったかな。
タイトルが、非常に個性のあるタイトルだと思うのですが、内容に対してベストなのかな…とおもいました。
○カメレオンは脳で考えるよりも周りを捉えて変えていく、俳優もそうだな、と発見しました。いい会話をしていましたね。企画書の完成の時のうごきもよかった。細かいしぐさに気を回すでしょ。異質なものをやろうとすると、研究するんですよ。偏見を捨てて、その役をスキになること。興味を持って、発見すること。そうすればいろんなしぐさを研究できる。
Cがリボンをつけるところ、ジーンと来たりしました。身につけるものをつけてあげる、とっても意味を持つんですよ。
さとうくん、小道具ととても仲良くしているな、とおもいました。
さやか、とても難しい役をよくやっていると感じました。異質存在を受け容れるという葛藤があるところをよく演じたと思いました。最後に前を向く勇気があるといいかな。
○自分自身捜しというのかな、自問自答していくところ、好感をもって見ました。普通でいろよ、よく使うけど、自分らしく、普通、ってなんだろうっと自問自答していくのはいいな、とおもいました。
仕事だったらマニュアルがあって、というあたり、
ゲームを出すのはどうかな、とおもいました。比較であったら生活と同じものを出したらどうでしょう。
仕事というのは、その通りやらなければうまくいかないわけだし。
カメレオン、非常におもしろいです。納得しました。説得力がありました。あれで舞台が進行していくわけで。転換もおもしろいですね。転換を見せるんだから、役として、やったらどうでしょう。
■東京成徳
○いい意味でゾクッとしましたね。あんなのがあったら、こわいな、と。それだけインパクトがありました。一見、すごい話し。それをよく進めていった。
会話をしているときの身体、客席に対する意識と、相手に対する意識があるんだけど、客席に対する意識が少なかったかな、と感じました。両方を持つと、自分の意識が変わってきます。もう少しからだ、肩を開くと、背骨の上に頭が乗る。ズバッと言える声が出る。ニュートラルな身体、どこにもギヤが入っていない身体、そんな状態を作ってみてください。ちょっとした変化、そこが表現できるんじゃないかな。
黒い本役っておもしろかったですね。自由な動きができますね。
教室の中、家の中、外のとき、さまざまな身体の違いが表現できるかな。ニュートラルな状態が作れるようになると。
○忘れられない黒い本…私の計画ができない、計画って何だろう、興味持ちましたね。消すことができる本。なんだろう。もしかしたら…と、次々に消していくのかな、怖いな、どういう展開になるんだろう…というとき、ゴミがなくなったときとか
浅いかな…ぼくには、世界が分からなかったんです。妹になりすます、どうやって成り立たせるんだろう、それが分からなかったんですね。
なぜ世界を消すんだろう…なぜ連絡ができたんだろう、など説明がなく…
消すほどの必然もよく分からない。
取り戻す本があるのもご都合かな…
商人が得体の知れない…どんな商人なんだろう、そんな世界が信じられず、入っていけなかったんですね。何を伝えようとしているのかをはっきりさせる、もう少し突き詰められたら。
○ふしぎなアイテムがあって、それに翻弄される人たち。アイテムに人格があるというのはおもしろいな、とおもいました。このおもしろい発想を、十分にまだ生かせていないかな。主な場所が、教室と家と公園。果たして、三つを舞台上に用意する必要があったのかな。場面転換の回数がだいぶ減らすことができるのでは。なるべく転換は減らしたい。場所をひとつだけでもできたかもしれない。
登場人物の割り振り、兄弟姉妹の設定がどれほど効果的だったのかな、みんなクラスメートじゃいけなかったのかな、とおもいました。姉妹になると、親や他の家族はどうなんだろう、と気になってしまう。
なぜ家族にしたのか、という説得力がある必要があったとおもいます。
しがない商人、だったら他にどんな商品を持っているのかなという意識が生じます。それに触れられていないので、もったいないなあとおもいました。人間関係がどのようにぶれて、落ち着いていくのかなどもっと深められるとさらによくなるとおもいます。
■日大一
高校生には見えなかった。役の年齢に見えました。非常にしっかりした演技、言い回し、感心しました。場面が変わらないのに、いろいろできる。とてもうまい処理の仕方をしていると思いました。ナースステーションにも病室にも見えました。セールスの古屋さん、ニュアンスがとてもいい。調子のいい言い回し。エンジニアの淡々とした語り口とシャーペンには熱く語るところもいいですね。
タイムマシンが工場になっていく、あれもいい。助手の衣装もいいですね。計算されているな、という印象です。
「ひとつでも嘘があると興味がなくなってしまう」と成井さんが言っていますが、嘘がないな、とおもいました。
一点だけ、転換で、青木さん、次の患者さんと変わるときにすうっと立って行くのは、見ている方は死んだとおもっているので、工夫があるといいかな。完成度高いと思いました。は:切ない話しですよね、泣きそうになりました。障碍があると燃えますよね。ラブストーリーが二つあるんですよね。どちらも素敵だな、と思いました。
のがたさんのお見合いのシーンが始まったとたんに、あ、これは結婚する、とおもいました。身体の使い方がとてもリアル。仕事について言っている時の姿がいい。お見合いのときのズボンがずれているのもいい。
一個所だけ、すずたにの冒頭の台詞と同じ台詞を二回言う。ここは、モノローグからダイアローグに変わっているはずなのだが、そこの変化がなかったかな。ここは見ていて惜しいな、と思いました。見事な上演でした。
○たくさん上演されている作品ですが、みんなの芝居になってほしいな、とおもって見ていましたが、そうなった上演でしたね。小さいところの吉沢先生がさりげなくカルテを渡すところとか、そこに医者の存在感が出るとか、さまざま出ているなとおもいました。
のがたさんの態度の違い、お見合いのシーンとクロノスの前に立った瞬間、集中よりも更に夢中になる瞬間。それがまさに描かれたな、と思いました。
すずたにさん、よくやりきりました。ちょっと台詞が早くなったときがあった。もう少し、いろんなテンポが出てくるとよくなってくるとおもいます。必ず、役者は常に対象に対する感情、と言われます。相手に対する感情で役者は動いていく。起こしていただけますか、この人もうダメなんですか、に対しての「ちがいます」がどう出てくるか。自分の感情でなく、相手にどう伝えていくか。対象を意識すると、もっと変わっていく。
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